＃施工図作成とは？

施工図作成とは、設計者が作成した「設計図」を、実際に工事を行う現場の職人や施工管理者が理解し、作業を進めるための「施工用」の図面に変換する業務のことです。

設計図は建物の全体像や意匠（デザイン）を示すためのものですが、それだけでは詳細な工事はできません。そこで、施工図作成者が設計図を読み解き、以下の目的を達成するために詳細な情報を補い、図面を完成させます。

＃施工図の主な目的

1. 施工の正確性を確保: 寸法、材料、工法などを詳細に記載することで、現場でのミスや手戻りを防ぎ、工事の品質を保ちます。

2. 情報共有の円滑化: 建築家、構造設計者、設備設計者、各専門工事業者（電気、空調、給排水など）など、複数の関係者が共通の認識を持って作業を進められるようにします。

3. 工程・コスト管理の最適化: 施工図に基づいて必要な資材や人員、作業手順を明確にすることで、無駄をなくし、工期短縮やコスト削減につなげます。

4. 納まり（おさまり）の検討: 異なる部材や設備がぶつからないか、どのように取り付けるかといった、詳細な部分の整合性を事前にチェックします。

＃施工図の種類

施工図には、様々な種類があり、それぞれ異なる目的で作成されます。

　  ・基礎躯体（きそくたい）:杭伏せ図、基礎伏せ図、基礎断面図、基礎部分詳細、ピット図など

• 躯体図（くたいず）: 建物の骨組みとなる柱、梁、壁などの位置や寸法、コンクリートの打設位置などを詳細に記載した図面です。構造図と意匠図を基に作成されます。

• 平面詳細図: 平面図に、部屋ごとの仕上げ材、建具（ドアや窓）、コンセント、スイッチなどの詳細な位置情報を追加した図面です。

• 総合図（そうごうず）: 意匠図と設備図（電気、空調、給排水など）を重ね合わせ、各配管や配線、機器が互いに干渉しないかを確認し、最適な配置を検討した図面です。

• 天井伏図（てんじょうぶせず）: 天井の高さ、仕上げ、照明器具、空調設備、点検口などの配置を詳細に示した図面です。

• 展開図（てんかいず）: 部屋の壁面を四方から見た図面で、建具や家具、コンセント、スイッチなどの詳細な位置関係を表現します。

• 割付図（わりつけず）: タイルや石材、外壁パネルなどの寸法に合わせて、どのように配置・分割するかを詳細に示した図面です。

＃施工図作成業務の特徴

施工図作成は、単にCADを操作するだけでなく、建築や設備の専門知識、さらには現場の状況を理解する能力が求められる専門性の高い仕事です。設計図の意図を正確に読み取り、現場の状況に合わせて最適な納まりを検討する、まさに**「設計と現場をつなぐ翻訳家」**のような役割を担っています。

近年では、BIM（Building Information Modeling）の活用により、3Dモデル上で複数の図面情報を統合し、干渉チェックを事前に行うことで、施工図作成の効率化を図る取り組みも進んでいます。